血液透析を受けている人に各種の身体症状が発生した場合、考えられる事項は考慮されなければなりませんが透析患者さんに頻発する症状や、透析患者さん特有の症状についての知識も必要です。
（透析患者さんに特徴的な症状には赤色をつけました）

頭部

精神・神経系の異常	尿毒症性脳症（傾眠、無気力、昏迷、昏睡、興奮、痙攣、脳波異常）、透析脳症（アルミニウムの蓄積が疑われている）
意識障害	脳出血、脳梗塞、一過性脳虚血性発作、低血圧、A-Vブロック、尿毒症性昏睡、睡眠薬中毒
頭痛	高血圧、脳出血、脳浮腫、不均衡症候群（透析後に出現して翌朝までに改善する頭痛）
めまい	貧血、起立性低血圧（透析後に多い）、高血圧脳症、脳血管障害、椎骨脳底動脈血栓症、発作性頭位性眼振（原因不明。内耳の浸透圧・電解質バランスの異常が関与？）
眼科的異常	糖尿病性網膜症、腎性網膜症、眼底出血（糖尿病者におこりやすい）、結膜下出血、白内障の増悪、肉翼片、眼球結膜の石灰化（CaとPの沈着）
耳鳴	貧血、高血圧、メニエル症候群
聴力低下	突発性難聴（原因不明。予後は良好なことが多い疾患だが透析者では重症化も少なくない。）、耳管狭窄
口腔内異常	口臭（細菌による尿素の分解。アンモニア臭）、口内炎（アンモニアも原因となる）舌苔（白色、褐色、黒色、緑色。口内の不衛生、全身状態の不良）舌尖部と口唇のしびれ（ビリビリ感。高血症の徴候として重要）口唇ヘルペス（免疫力の低下が関与。多い。）
耳下腺・顎下腺の腫脹	結石による導管の閉塞、非特異的唾液腺炎

胸部

心臓部疼痛	心筋梗塞、狭心症、過除水、尿毒症性心包炎
肋骨部痛	肋骨骨折（腎性骨症では、軽い圧迫や咳などでも折れてしまうことがあります）
動悸・息切れ脈拍異常	心不全（水・Naの貯留、高血圧、弁膜症、心包炎）、心筋症、不整脈、貧血
咳・血痰・呼吸困難	肺浮腫（多量の水・Naの貯留）、尿毒症性肺、肺出血、肺炎
乳腺腫脹・疼痛	女性化乳房（女性ホルモンの蓄積による）、乳腺炎
乳汁分泌	乳漏（女性ホルモンの蓄積）
その他の胸痛	胸膜炎、肺梗塞

腹部

食欲不振	胃炎、高窒素血症、肝炎（GOT・GPT異常。B型、C型、薬物性）
左上腹部痛	胃炎、胃潰瘍、膵炎（高脂肪食）
上腹部腫瘤	先天性のう胞腎、続発性のう胞腎
吐・下血	尿毒症、マロリーワイス症候群、胃潰瘍、痔、消化管のがん、肝硬変
除水に伴う腹痛	腸管の虚血、狭心症
背部から鼠径部へ移動する疼痛	尿管結石
その他の腹痛	憩室炎、穿孔性腸炎、腹膜炎、腹膜透析による腸管の癒着、被嚢性硬化性腹膜炎、便秘

下腹部

月経困難症	内分泌異常、栄養障害、出血傾向、子宮内膜症
インポテンツ	精神的、栄養障害、自律神軽障害、性腺機能不全
膀胱炎	尿量減少、易感染性
血尿	腎炎の持続、結石、膀胱炎、がん、腎のう胞の破裂、腎動静脈瘻
便秘	水分の制限、野菜や果物の制限、炭酸カルシウムほかの薬剤の内服
痔疾	便秘、腹水、心不全、肝不全

骨・関節

頸肩腕症候群	肩関節アミロイドーシス、頸椎症、シャントによるうつ血、筋緊張
手根管症候群	アミロイドーシスによる1～4指のしびれ・疼痛（夜間増悪）
腰痛	腰部椎間板ヘルニア、腰椎圧迫骨折、腰椎症
股関節痛	アミロイドーシス、腎性骨症、骨折
第一趾関節痛	痛風、外反拇趾
膝関節痛	腎性骨症、アミロイドーシス、変形性関節症
踵骨部疼痛	腎性骨症、脂肪組織炎
筋力低下	栄養障害、運動不足、血行不全、脳血管障害、関節痛
多発性関節痛、骨症、病的骨折	二次性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD代謝異常
下肢のいらいら症候群	尿毒症性神経症