須田クリニック・須田内科クリニック|高田馬場 内科・血液透析

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透析時間数について

透析治療の作用は、ダイアライザーの性能、体重当たりの血液流量、透析時間数等によって左右されます。血流量が限界を超えるときには透析時間数を増やすことになります。体の小さいかたは3時間で体の中をすっかりきれいにすることもできますが、体の大きめのかたは、高性能膜を使用しても、一般的には4時間前後が必要で、ときには5時間程度の時間が必要なこともあります。
カズノコの塩出しを考えてみてください。大振りのカズノコの塩だしは、小ぶりのものよりも時間がかかります。大きな桶につけて激しくゆすっても、塩出しに必要な時間はあまり変わりません。急がず、落ち着いて透析する気持ちが大切です。
透析時間数は計画的に決めておくことが理想的です。しかし透析中に思いがけない体調の変化やトラブルが発生して透析の継続が困難または危険になったときは、医師の判断によって透析を短時間で終了することがあります。このような場合には次回の透析時間を若干延長する必要があるかもしれません。
透析中断の多くは過大な除水にともなう血圧の低下が原因です。飲んだ水は取り除かなければなりませんが、1回の透析で除去できる量には限界があります。むりな除水を行うと、血圧が低下するために十分な透析ができなくなり、水や老廃物が体に残ってしまって、体調を悪化させるおそれが出てきます。飲水は体に負担をかけずに除去できる範囲におさえて、良好な体調を維持できるようにしましょう。塩からいものを食べると、のどが渇いて水をたくさん飲みたくなるようです。

QOL(クオリティーオブライフ)という言葉があります。患者さん自身が感じる生活の満足度を表します。透析時間が短ければ治療による束縛が少なくなります。
しかし、QOLは将来のことを評価項目に入れていないことには注意が必要です。たとえば糖尿病や高脂血症の人が目先の生活の満足度にこだわれば、将来の合併症を招くことになるかもしれません。透析生活では長い人生をどのように送るかという、将来のことを考える視点も必要です。透析時間が短ければよいと言うわけではなく、十分なことが良いのだという考え方も、検討してみてください。
どうしても短時間しか透析できないときは、ただ時間を短縮するだけでなく、ダイアライザー、血流量、食事内容なども点検して、できるだけ効率の良い透析を設計することが大切です。

透析時間と生命予後

昭和40年代の血液透析は8時間程度行われた時期もありました。透析技術の発達によって、昭和50年代には5時間透析が普通になりました.透析技術はその後も進歩を続け、昭和60年ごろからは健康保険による支払額が、透折時間4時間と5時間で同じになったことをきっかけに、4時間透析が普通になりました。
平成15年の医療改革では、健康保険の支払いが3時間までで打ち切りとなり、環境はさらに悪化しています。
4時間透析あるいは3時間透析には、経済的な問題の影響が否定できません。しかし医学的にみて、どのくらいの透析で十分かというデータは、これからの課題となっています。
少し古くなりますが、1999年までの透析の調査結果を示します。

透析時間が1年生存率に与えるリスク(透析医学会、2000年)
(透析歴2年以上のみ。Kt/V for urea で補正)

透析時間(時間) 相対危険度(95%信頼区間) p値
< 3.0 9.851 (3.263 29.740) 0.0001
3.0≦ < 3.5 2.869 (2.499  3.293) 0.0001
3.5≦ < 4.0 1.289 (1.099  1.512) 0.0018
4.0≦ < 4.5 1.000 (対象) 対象
4.5≦ < 5.0 0.839 (0.754  0.932) 0.0011
5.0≦ < 5.5 0.905 (0.815  1.006) 0.0645
5.5≦ < 6.0 0.889 (0.545  1.450) 0.6370
6.0≦ 0.789 (0.490  1.271) 0.3305

調査の対象は1999年末に週3回の透析を行っていた患者さん75,337名です。これらの患者さんのうち5006名が1999年末までに死亡していました。解析の結果、透析時間はやはり生命予後と有意に関係しており、透析時間が長いほど死亡のリスクが低いことが示されています。3.5から4時間の透析よりも4から4.5時間の透析の方が明らかにリスクが低くなっています。5時間以上の透析には有意差は見られていません。4時間以下の透析では、死亡のリスクが3割ほど増加しており、3.5時間以下では死亡のリスクは約3倍にもなっていました。
4時間透析は、あくまでも社会的、経済的な要素によって決められたものにすぎません。私たちの能力は限られており、時間にも制約がありますが、患者さんが延長を希望するならば、できるかぎり良い透折のための努力をしていきたいものです。
透折治療は日進月歩を続けています。やがて4時間以下でも十分な時代が来るかも知れません。しかし人間の体のほうは急速には進歩しないので、現在の透析方法での時間短縮には限界があるかもしれません。
ところで、血液透析装置は体の毒素をとってくれますが、心の毒素はとれません。心の毒素を取り除くには、患者さんと透析スタッフの対話が必要です。悩み、苦しみ、悲しみなどのストレスは、人に話すことによって口から出て行きます。医療では患者さんと治療スタッフとの対話が大切です。透析時間が短くなると、ゆっくり話す時間もなくなるのではないかという心配も、ないわけではありません。